私は製薬会社(特に新薬メーカー)への投資はあまり積極的にしていません。
というか、なれません。
なんでや?
一つ目の理由は、夫がその業界の人かつ私が現在無職なので、日々生活するために入ってくる資金(キャッシュフロー)が、ほぼその業界に頼ってしまっているからです。
そんな状態で株まで製薬会社比率を高くすると、仮に製薬業界というビジネスモデルがより一層厳しい時代になると仕事も資産も蒸発してしまうことになってしまいます。
そして、もうひとつ理由がありますが、それは製薬会社の業界的な問題です。
製薬会社はギャンブル業種
新薬を作るのはとっても大変です。
新薬の研究開発には、長期的かつ大量の資源・資金(何十億とか何百億とか)の投入を伴いますが、それが新製品への創出へつながる保証はありません。
がんばって何万という化合物の中からようやく新薬候補となる化合物を見つけ出したとしても、薬としてこの世に送り出すために試験(治験)をクリアできずに消えていくものが少なくありません。
少なくないどころか、この試験(治験)の成功確率は10%未満ともいわれ、ほとんどは開発失敗に終わります。
実験室でマウスに対して投与していたときはすごくいいかんじだったのに、試験(治験)で人間に対して投与するとイマイチだったみたいなことが普通に発生します。
しかも、この試験(治験)というのは、実施するのにむっちゃお金がかかります。
何十億とか何百億とかかかります。
つまり、10年近い年月をかけて、何百億かけて製品化できないということが普通に発生するということです。
投資に見合う対価が回収できるとは限らない厳しい世界ですね。
なので、いってしまえば、ギャンブル業種です。
当たれば大金持ち、外れればすっからかんです。
特許が切れるとジェネリック医薬品が出てくる
そして、もうひとつ厳しい話ですが、、
がんばってすごい薬を作り出してもそこで終わりではありません。
せっかく多額の費用と長い年月をかけて新薬を世の中に送り出したとしても、そのうち特許がきれてジェネリック医薬品が出てきます。
同じ有効成分を持つジェネリック医薬品が出てくると、当然新薬のシェアは落ちますから、売上が落ちます。
そうすると、それだけでは会社の従業員を食べさせていくことができませんので、またギャンブルをして新薬を作らなければなりません。
成功するかどうかも分からないギャンブルを永遠と続けていかなければならないのです。
ギャンブルで勝ち続けないと会社を存続できないんですね。
どうせ株を買うなら、半永久的にお金を稼ぎつづけてくれる強固なビジネスをもってる会社の株を買いたいんですよね。
しかし、残念ながら製薬会社にはそれがないんです。
治験で多額の費用がかかるのはなぜ?
ところで、治験でどうして何十億も何百億もお金がかかるのか分からないという方のために簡単に説明をします。
そのためにはまず治験が何かというところから説明する必要があります。
治験とは
製薬会社で開発中の医薬品を患者さんや健康な人に使用してもらい、国から薬として承認を受けるために行う試験があり、それを治験と呼んでいます。
この試験により、人に対しての有効性や安全性(副作用)などを確認します。
新薬は、製薬企業の研究者や医療機関関係者の力だけで生まれることはありません。
患者さんをはじめ多くの方の理解と協力を得て治験を行い、その有効性と安全性が確認されて、はじめて世の中に薬として送り出されます。
治験の流れ
治験には通常下記のような3つのステップが存在します。
各段階での厳正な審査を通過したものだけが国に新薬として認められます。
- フェーズ1(第1相試験):健康な成人に対して投与し、治験薬の安全性や、呼吸・排泄などの状態を確認します。
- フェーズ2(第2相試験):少数の患者に対して投与し、治験薬の用法や用量を確認します。
- フェーズ3(第3相試験):多数の患者に対して投与し、既存の標準的な薬やプラセボ(薬として効き目のない偽薬※)と比較をします。
※偽物の薬でも、患者さんに本物の薬と伝えて飲ませると、「薬を飲んだ」という安心感からか症状が良くなることがあります。
だいたいの新薬候補はこのフェーズ1~2で脱落していきます。(約8割)
3までいければだいぶ成功確率が上がりますが、それでも5割程度と言われます。
治験は病院にとってイレギュラーな業務
そして、お金がかかる理由ですが、まず治験にはたくさんの人が関わります。
例えば以下のような人たちです。
- 患者さん(治験の被験者)
- 病院の医師、看護師
- 治験事務局
- 薬剤師(治験薬の管理・薬剤調製)
- 検査技師(検体処理等)
- CRC(治験コーディネーター)
- CRO(医薬品メーカーから依頼を受け、医薬品メーカーの立場で治験を支援をする人)
- SMO(医療機関から依頼を受け、医療機関において治験を支援する人)
- 病院の関係部署(総務課・会計課・医事課他)
- 製薬会社の営業担当者(MR)
医者と患者さんだけでは試験はできないのよ
そして、治験の開始から終了まで、これらの方々が、情報を共有し合い、協力体制を築かなければ治験を無事に終了させることができません
なぜなら、病院にとって、治験は通常業務ではなく、イレギュラーな業務となるためです。
なので、治験に先立ち、メンバーに教育訓練を実施する必要があります。
治験資材の取り扱い、治験薬の管理方法・オーダー方法などを定めて、教育します。
GCP(Good Clinical Practice)でも、治験依頼者はモニタリングに関する手順書を作成することを定めており、手順書に従ってモニタリングを進めることが求められます。
これだけ大変な準備をして成功するかどうか分からない薬のために何カ月~何年もかけて試験を実施していきます。
しかも、薬って1回投与して終わりじゃないですからね。
1回投与して、その後も2週間間隔で投与してその効果をモニタリングし続けるとなると、とんでもない労力がかかります。
こんなことを繰り返していくと何十億とか何百億とかいうお金になってしまいます。
試験のためにはものすごい金額のお金が必要になることが少しはお分かりいただけたでしょうか。
やはり新薬メーカーへの投資はハイリスク
というような事情があるので、やはり、製薬会社(特に新薬メーカー)へ投資することはリスクが高いと言わざるを得ません。
ただし、新薬メーカーは高給で有名です。新薬って利益率が良いので。
ですので、就職するのには良いところかもしれません。
しかし、株式投資する対象としては、素人が手を出すようなところではないと思っています。
パイプライン(新薬候補)を大量に抱えているメガファーマ等であればまだマシですが、そうでない会社への投資は博打みたいなものと思ってます。
大企業であるエーザイや大日本住友製薬ですら臨床試験(治験)失敗で簡単にストップ安になります。
例えば、ちょっと古い話ですが、エーザイ(4523)が米バイオジェンと開発中のアルツハイマー型認知症の治療薬候補「アデュカヌマブ」について、治験を中止すると発表しストップ安を記録しています。
さらに、バイオベンチャーまで含めるともう暴落の嵐です。
2016年に大暴落したアキュセラもそうですし、去年に大暴落したサンバイオもそうです。
他も色々暴落した会社があったと思いますが、いずれも暴落理由は、治験失敗によるものです。
当たれば大きいので、投資家たちの期待も高まりやすく株価は過熱しがちですが、駄目だと分かった瞬間大暴落です。
治験はだいたい失敗します。
また、新型コロナウイルスで騒ぎ出したときは一時期製薬会社の株価が上がりだしたりして盛り上がっている時期がありましたが、それは投機的なお金です。
純粋にその会社を応援したくて買っているわけではないです。
このように、投機的なお金で恐ろしい値動きをしますから、高値追いするような買い方をすると大やけどしてしまいます。。
短期でエントリーするには良いかもしれませんけど長期保有というのは、どうかなーっと正直思います。
あまり積極的にはお勧めできません。
難易度高いです。
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